こんにちは、MEDIYライターの山崎です。今回ご紹介する事例は飲食店舗と商品に関するネーミングとロゴデザインです。
随分と昔の話にはなりますがお酒を覚えたての頃、訪れたBARのコースターを持ち帰るという収集癖が一時ありました。コースターには店名とシンボルマークが組み合わされたいわゆる「ロゴマーク」だけのものですが、それがまた格好よく。
先輩に奢ってもらったウィスキーの味は全く分かりませんでしたが、「ロゴマーク」から漂う雰囲気に酔いしれていたことを今でも覚えています。飲食店舗と商品に大きなメリットを秘めるロゴマークの重要性から、ブランディングも見込めるロゴマーク作成の考え方を本邦初公開でご紹介いたします。
「ロゴマーク」が必要な理由
どの飲食店へ行くか決める際、判断材料となるのがレビューではないでしょうか?リアルな体験談や評価を事前に知ることで失敗のないお店選びを行なっているかと思います。またレビューから読み取れる情報とは主に「言葉、文字」によるもので、人はそれを左脳で受け取り論理的に判断すると言われています。
しかしロゴマークには、これらとは違う働きがあり、飲食店や商品にとって確かなメリットをもたらします。どのようなメリットをもたらすのか、具体的に見ていきましょう。
店舗(商品)のイメージが一目で伝わる
ロゴのタイプは主に店名(商品名)とシンボルマークを組み合わせた、ひとつの「ビジュアル(ロゴマーク)」として構成されています。左脳で論理的に判断される「言葉、文字」と違い、「ビジュアル」は右脳で処理され、直感的に人の感性に働きかけます。それだけにロゴは記憶に残り、かつ店自体のイメージとも直結したものになります。
店舗(商品)のブランディングにも貢献
ブランディングとは、企業名や商品名、店舗名などの名称を冠したものの価値を高めることを指します。ここで言う価値とは、店舗や商品が持つ特長が消費者へに深く伝わることを指します。最近では「激盛り」「激安」「激辛」を売りにしたお店がメディア受けされることから行列になりやすい傾向があります。何かとインパクトがあるため他店との差別化も図りやすいメリットがある一方で、サービスを提供し続けるには店舗と従業員への負担が大きすぎるというデメリットもあります。
例えば「値段が高くても、ここでしか出会えない味」という価値を伝えてあげることができれば、無理して差別化することなく、自店のブランド力で勝負することができるのです。ロゴマークとは店舗(商品)にとってお客様との接触を図る上での始まりのデザインであり、未来を約束し続ける証とも言えるのです。
店舗(商品)のロゴの作り方
店舗(商品)にとってのロゴの意味や必要性をわかっていただけたと思います。では、実際にロゴを作成するにあたっての4つのステップを過去の事例を元に解説いたします。商材はオリジナルウィスキーのネーミングとロゴから成るロゴマークです。
1.情報整理で一番の特徴を見つけだす
ネーミングやロゴの作成は商品の持つ特徴を知ることから始めます。特徴を知るとは単に商品プロフィールを調べあげるだけにありません。ネーミングやロゴを深く記憶してもらうための手がかりを知ることがロゴマークつくりには求められます。商品特徴を洗い出し、自力に勝る点は何かを見つけていきます。
今回の事例で言えば、【山梨の蒸溜所で生産】【ブレンデッドウィスキー】【富士山の伏流水を使用】が商品の持つ3大特徴であると集約できました。ここから更に4つの異なる方向性を定め、特徴を想起させるネーミングアイデアを出し合っていきます。この過程においては他の商品と比較することも効果的です。商品を通じてお客様が得られるベネフィットは何なのか?をイメージし、個性という名のふるいにかけて最後の一つになるまでふるい続けます。
2.ロゴマークの要素を考える
ネーミングアイデアの候補が出揃った時点で、ロゴマークとして具現化していくための作業に移ります。本商品の特徴から共通していたのが「国産ウィスキー」であることと、「富士山の豊かで清らかな伏流水」を使用しているということから、「和」と「自然」を同時に表現できる「手書き文字」を表現手段として採択することになりました。
ネーミング案に至るまでのコンセプトを手書きデザイナーに共有することで、タッチの異なる手書き文字で特徴を表現することを意図しました。
3.ボトルイメージの作成
絞られたネーミング案を一枚の提案書に纏めていきます。ネーミングだけではイメージしにくいためボトルイメージを作成することで名前と体を一致させクライアントへのイメージ補助を行うことも大切な作業過程になります。同じ商品でも特徴ごとの方向性によって別物の商品に見えるかもしれません。名は体を表すという言葉が正にそうであるようにロゴマークの作成は商品にとっての命そのものである重要なデザインを担います。
クライアントへのプレゼンを行い、ネーミングは「鶯」に決定。
4.シンボルをつくる
ネーミングは動物を方向性にした「鶯」で決まりましたが、これでまだ完成ではありません。商品ブランドをより助長させるためにシンボルマークの作成を最後に行います。シンボルができることで後に愛着であったり、信頼といったお客様との距離を縮める効果を発揮します。
シンボルマークの考え方
ネーミング作成に必要としたコンセプトをストーリーにまで落とし込むことで新たなイメージが生まれてきます。「鶯」ではブレンデッドウィスキーの特性と掛け合わせて、「明朗と慈愛」というキーフレーズを掲げました。モルトとグレーンの異なる原料が豊かに調和することで生まれるブレンデッドウィスキーの特徴に、他のひな鳥を育てるという優しい習慣を持つ鶯を重ねることで愛らしいアイコンをシンボルマークとして作成しました。またテーマカラーには「緑」を採用し、安心・癒し・自然と言ったイメージを連想させトーンの調整を行なっています。
完成したロゴマーク
特徴を落とし込んだロゴマークが完成しました。
まとめ
今回ご紹介した事例は商品のネーミングとロゴでしたが、基本的な考え方は店舗でも同じです。特徴を表現することで手に取ってもらいやすくなったり、来店の補助にも繋がったりとポジティブなイメージツールとして使用が可能と思います。この記事を機会に自分たちのブランドコンセプトは伝わっているか、正しく表現されているかのセルフチェックになれば幸いです。
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