東京・大阪など9都道府県に出されている緊急事態宣言について、政府は、専門家でつくられる分科会に来月20日までの延長を提示しました。(5月28日時点)
国民全体の不安と不満とが募る中、コロナ禍の影響で増えるカスハラが問題になっています。トラブルを招かないための注意点と未然防止策をあわせて解説いたします。
約2割が「新型コロナ禍の影響でカスハラが増えた」と回答
株式会社エス・ピー・ネットワークが行った「カスタマーハラスメント(カスハラ)」についての実態調査によれば、「コロナ禍の影響で増えている」と感じた方が全体の2割に及んでいることが分かりました。また「直接の影響でなくても増えている」と回答した方を含めると実に4割近くにまで及ぶことから危機感を覚える結果です。
カスハラとは、カスタマー(顧客)からの不当で理不尽な言い分が「お客様の声」として対応できるレベルを超え、ハラスメント(嫌がらせ)の領域に達し、従業員が心身ともに追い込まれてしまう状況を意味します。
引用:「疫病神」のカスハラ客を、キッパリお祓いするための神対応とは
約4割が「従業員の対応」についてカスハラを受けたと回答
また、新型コロナに関連するカスハラの中で「従業員の対応」についてカスハラを受けたことがある人は約4割と最も多く、従業員の対応等に難癖を付けて、カスハラに発展している傾向が顕著といえます。その他では、「商品」に関するものが約3割と続いています。
コロナ禍で飲食店スタッフが体験したクレーム
- アクリル板を嫌がられた
- アルコール消毒をお願いしたが拒否され、再度お願いしたところ社長を出せと怒鳴られた
- ソーシャルディスタンスを守らないことを注意したところ逆ギレされた
- 話し声の大きさを抑えるようお願いしたところ怒られた
- マスクの仕方が悪いと言いがかりをつけられた
- 釣り銭の返し方に難癖をつけられた
参照:飲食店スタッフって辛い! コロナ禍で登場したクレーマーを調査
お店側が行っている感染症対策に難癖をつけるカスハラが横行しています。
暴力事件にまで発展したケースも
今年の4月に千葉県の飲食店で起きた来店客によるトラブルは、暴力事件にまで発展しました。店の入口にはマスクの着用を呼びかけるPOPが貼られていたのにも関わらず、容疑者はマスクを着けずに来店。スタッフがマスクの着用を呼びかけるもこれを拒否。スタッフが入店を拒むとそれをも拒否。居合わせた別の客と乱闘騒ぎに発展したといいます。飲食店スタッフと利用客の安全が脅かされるトラブルでした。
引用:「俺はしない」マスク拒否男またトラブル!飲食店で暴れ警察官を殴る…過去にはピーチ機内でも運航妨害
上記のようにコロナ禍でマスクを着けていない客の入店を拒否することができるのかどうか、に対して、法律上の見解は?
結論としては、法律上、マスクを着けていない客の入店拒否をすることはできます。
なぜなら、その店の所有者や管理者は、営業の自由があり、基本的に、その店にどのような客の入店を許すかどうか、誰と契約するかどうかについて決める権限を有しているからです。
但し、例外もあることと、マスクを着けていないお客さんにも様々な理由(皮膚疾患など)があるため十分な配慮が必要です。
感染症対策が仇に?飲食店が注意すべき点とは?
「マスク拒否」のトラブルは、店舗側が感染症対策をしっかりと行いながらも引き起こされました。被害に遭ったお店は、“たまたま運が悪かった” だけなのでしょうか?出会いがしらの事故だとは済まされない疑念がよぎります。入店時の「マスク着用」以外にも、「マスク会食」「黙食」を利用客に促すシーンは今後も続くことでしょう。飲食が進むにつれルールの念は薄らぎ、またアルコールの提供が再開されることでトラブルはあらぬ形でもたらされます。どの店舗でも十分起こり得ることを認識しておく必要があります。
飲食店が行える未然防止策
お店側の落ち度につけこみクレームを発するという蛮行も起こっています。クレームの芽を摘むためにも、感染症対策を盛り込んだお店独自の危機管理マニュアルを作成されてみてはいかがでしょうか。
チェック項目の例として
- アルコール消毒等の備品補充
- スタッフの感染症対策の徹底
- 飛沫感染対策の徹底
- 対面レイアウトの見直し
- 店舗責任者からお客様へのメッセージの有無
国による対策も動き始め、消費者庁は2021年2月に「消費生活相談における相談対応困難者(いわゆるクレーマー)への対応マニュアル」が作成されました。さらに厚生労働省では今後カスハラに類する「悪質なクレーム」について、企業がとるべき対策を指針で明示する予定だとしています。詳しくは下記の対応マニュアルをご覧ください。
消費生活相談における相談対応困難者(いわゆるクレーマー) への対応マニュアル作成
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まとめ
来店時は「マスク着用」「アルコール消毒」と感染症対策のルールに沿いながらも、飲食が進むにつれおざなりになるケースが考えられます。緊急事態宣言の解除後はアルコールの提供再開にも注意が必要です。経営者の方にとって、感染症対策によるスタッフの安全を図ることはもちろんのこと、コロナ禍によって増加するカスハラからもスタッフを守ることも等しく重要です。この機会にお店独自の危機管理マニュアルを見直されてみてはいかがでしょうか?